自分は『遺言書』を作成したほうがいいのかどうか問題(その1)

 今回は、「相続は揉める事が多いので、遺言書を書いておいてあげましょう。

と最近よく耳にするけど私には、30年以上住んでいる自宅(土地・建物)ぐらいしか遺産はないし、家族も仲悪くないし、家族以外の人に遺産をあげたいともおもってないから、わざわざ遺言書なんか作らなくても大丈夫ですよね?」というような要旨の質問を、いくつかいただきましたので、

以下、『自分は遺言書を作成したほうがいいのかどうか問題』について、簡単にですが、回答してみたいとおもいます。

遺言書イメージ

はじめにお伝えしたいこと!!

残念なお知らせですが、家庭裁判所での決着に持ち込まれた『遺産争い』を平成30年の司法統計を参考にご紹介すると、遺産分割事件で認容・調停成立件数が7507件。

うち、364件は遺産額の算定不能か不詳なので、分母数を、7507-364=7143件として計算すると、遺産総額が1000万円以下の案件が、34.7%(2476件)、5000万円以下までひろげると、80.1%(2476件+3249件=5725件)。
自宅不動産のみが遺産の方は、ほぼこの80.1%の中に入ってくるのではないでしょう
か。
とすれば、遺産相続で揉める可能性は他人事ではなく、自分事!!

今は家族仲良くても、相続時の事情によっては、お金が必要な相続人もいるかもしれません。(例えば、リストラや事故等で急にお金が必要な時期と重なった。とか子供達にもっと習い事をさせたいとか、目先のお金が優先される事情はたくさんありますよね・・)


遺言書がなければ、相続人全員一致でどうわけるか決めなさい。全員一致で決められなかったら、法律に従った割合で遺産を分けなさい。

というのが遺産分割ルールですから、相続人のうち一人でも「自分にも相続人として権利があるなら、権利分のお金はもらいたい」と主張した場合は、唯一の遺産である自宅を売却して現金化せざるをえない事態になってしまいかねません。
(遺産の分け方にはいくつか方法があるので絶対現金化しないといけないわけではないのですが、遺産のほとんどが自宅不動産のみというケースは現金化することが多いかとおもいます。)

なので、推定相続人が複数いて、そのうちのどなたか特定の人に、自宅をそのまま相続してもらいたい。というお気持ちが強いのであれば、遺言書まで作っておかれるほうが安心でしょう。

そして、遺言書には、必ず、なぜそのような遺言にしたのか。相続人全員の心に届くように、しっかり貴方のきもちも書いておかれることをおすすめします。

なぜなら、「亡くなった方が築いてこられた財産なので、誰に遺すのかは、亡くなった方の意思が一番尊重されるべきだから、法律のルールにのっとった「遺言書」があれば、まずはその中身を優先で聞いてあげよう。」という考えかたで遺産分割ルールがつくられているのですが・・・

その一方で、「でも、亡くなった方の暴走気味の意思によって遺された家族が生活できないようになるのも駄目だし、ある程度、相続人間の公平も保たんとね」という一種の歯止めルールとして、一部の法定相続人達には「遺留分」という期間限定ではありますが、遺産の一部を貰える権利が与えられているのです。

なので、その「遺留分」を主張しないで、私がこういう遺言をしたおもいをくみ取ってね。決して誰かをえこ贔屓したり、子供達への愛情に差があるわけではないんだよ。」というメッセージを添えておくことが、相続を争族にしないために大切な事だと、私は考えているからです。

とはいえ、ここまで読んでいただいても、「争うリスクがあるのはわかったけど、やっぱり遺言書を書くのは、ハードル高いし、自分の考えだけ家族に伝わったら、後は遺された家族を信じて、自分達でいいようにしてくれたらいいわ」と思われた方は、ぜひ
エンディングノート」だけは、書いておいてあげてください。
遺される家族が苦悩されるのは、意外と「まかせる」と丸投げされることなんですよ。
 
さて、ここまでは、妻と子供が法定相続人となる場合として回答してきましたが、
 もうひとつだけ、今回お伝えしておきたいとおもいます。
  
  遺言書がない場合は、法定相続人が全員で話し合うことになる。と前述しましたね。
 もし貴方に妻(または夫)はいるけど、子供がいない場合は、どれが法定相続人となるのでしょうか?

  この場合は、妻(または夫)とあなたのご両親、既にご両親が亡くなっているのであれば、あなたの兄弟姉妹(既に亡くなった兄弟姉妹がいる場合は、その子供達を含む)が、法定相続人となってしまいます。

  なので、常日頃の親戚づきあいの差はあるでしょうが、遺される妻(または夫)は、貴方の遺言書がないと、完全アウェーな立場で、遺産分割協議を取り纏め、自宅の権利を自分だけのものにするために大変なご苦労をされることが予想されます。

  だから、このような場合は、少額の遺産であっても、必ず「遺言書」を作成しておいてあげてください。

  その他、再婚のご夫婦で、前婚の時の子供とは別居していて、その子には財産は遺したくないなと考えている方なども、「遺言書」の作成を検討したほうがよいでしょう。

  あとは、いわずもがなですが、「事実婚」の夫婦の場合も、「遺言書」作成をおすすめ
 します。

他にも、同じようなケースにみえて、家族・財産事情は、十人十色!!
具体的なお気持ちをゆっくり紐解いたうえで、個別事情をじっくり検討し、「遺言書」まで必要かどうか判断することが、本当は大切なので、今回のブログを読んでいただいて、何か気になる点があれば、是非具体的にご相談いただければとおもいます。

また、実際に「遺言書」作ることにされた方は、無効にならない「遺言書」にすることが次に大切になってきますので、そこは専門家に相談しながら作成してくださいね!!

そして、今回最後にお伝えしたいのは、どんな事情の方も絶対書いておいたほうがいいのは、「エンディングノート」です。
  自分の意思がはっきりしているうちに、今すぐにでも、書き始めてくださいね。

 「エンディングノート」は法的な効果まで約束されていませんが、貴方の情報・おもい・意思をしっかり、大切な家族に伝えるツールとしては、とても有意義なものですよ。


「遺言」や「エンディングノート」作成・活用に関しては、お伝えしたい事・気をつけていただきたい事が、個別案件ごとに沢山ありますが、長くなってきましたので、今回はここまでとさせていただきますね。

では、また次号で。これからも色々なかたちで皆様のお役にたてれば幸いです。
                             

筆者「るみchan先生」こと岩井留美

 

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