相続財産の中に『農地』がある場合に注意したいこと

 

今回は、

「相続財産の中に『農地』がある場合、自宅等の不動産とは違う手続きが必要だったりしますか?その他、注意することがあれば教えてください。」

との質問をいただきましたので、以下簡単にはなりますが、回答してみたいとおもいます。

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まず、『農地』も亡くなった方の相続財産の1つですから、他の相続財産同様に、有効な遺言書がなければ、相続人全員による遺産分割協議によって、誰が相続をするかを決める必要があります。
(もちろん、一人だけで相続せず複数人での共有にして持分を決めるという方法も可能ですが、一般的な不動産も含めて、後々共有不動産だと利用処分にあたり意思統一を図ることが困難になった時に面倒なので、単独所有をおすすめします。)

「農地を相続する人」イコール「農業を承継する人」である必要はありません。
ですので、亡くなった方の自宅等の土地や建物同様に、遺言書や遺産分割協議書にもとづいて相続人(または受贈者)が、相続を原因とする所有権移転登記手続きをするというところまでは一緒の手続きで大丈夫です。

 しかし、農地の場合は、相続登記完了後に、農業委員会に「農地法第3条の3第1項の規定による届出」を提出する必要があります。
この届出を怠ると10万円以下の過料に処せられるという規定もあるので、忘れず提出しましょう!

 そして、農地を相続した人は、農業は承継する意思がなくても、農地の所有者として農地法のルールに必ず従わなければならなくなります。

 具体的には、誰かに農地のまま売却や賃貸借する場合、自ら農地以外として利用する場合、誰かに農地以外のものにする目的で売却や賃貸借する場合など、それぞれに農地法にもとづく農業委員会や都道府県知事又は指定市町村長に対して、許可や届出を事前にする必要があります。
 
また、農地区分によっては、農地以外として利用してはいけないエリアにある農地もありますし、一定規模以上の農地を農地以外で利用する場合には都市計画法にもとづく開発許可手続きも必要になったりします。

 相続財産に『農地』がある場合は、その農地が、市街化区域にあるのか市街化調整区域にあるのか、必ず確認しましょう。
市街化調整区域にあるのであれば、どの農地区分に分類されているのかを、遺産分割協議の前段階でしっかりリサーチし、その農地を相続した後はどう活用するのか具体的なイメージをもったうえで、相続するのか(場合によっては相続放棄すべきか)を判断する必要があります。なかなか、複雑な判断になると思いますので、必ず専門家に相談しながら決断されることをお薦めします。

 特に、市街化調整区域にある農地の場合や、市街化区域であっても生産緑地に指定されている農地の場合は、一筋縄ではいかないケースも散見されますので、早め早めに専門家に相談することが大切だ。ということを覚えておいてくださいね。

もちろん、遺言書で「農地」について書く場合も同様事前リサーチをしたうえで、誰に譲るのか、処分の方法などを熟考することをおすすめします。そうでないと、せっかく大切な相続人(受遺者)のことを想って作成する遺言書なのに、ただ迷惑な押し付けにしかならないケースもあるので注意してくださいね。 

 今時は農業承継されない方も多いので、前述した「農地法第3条の3第1項の規定による届出」書の中に、「農業委員会によるあっせん等の希望の有無」という欄が設けられています。相続人が今後農業を行わない場合は、「有」を選択して、農業委員会で、農地処分の方法や自分の代わりに農業を続けてくれる人を見つけてもらうなどのサポートを受けることができるようにはなっていますので、各農業委員会で温度差はありますが、専門家への相談とあわせて、こちらの制度も利用してみてもいいかもしれませんね。

 以上簡単ですが、今回いただいた質問への回答とさせていただきます。

 

大阪は、また明日から緊急事態宣言措置期間に突入です。ストレスフルな猛暑下での自粛生活が続きますが、皆様くれぐれもご自愛のうえお気をつけてお過ごし下さいませ。マスクをしていると水分補給を忘れがちですので、私も気をつけたいとおもいます。

 

筆者「るみchan先生」こと岩井留美 

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