法定相続人の中に行方知らずの人がいる場合、遺産分割協議はできないのか問題

今回は『相続手続き』に関して以下のご質問をいただきました。

「父親が亡くなったので相続手続きをはじめたいのですが・・・。実は父には離婚歴があり、母親に引き取られた娘(私の腹違いの姉)が一人いることは父から聞いて知ってはいたものの、父や親戚とも完全に疎遠になってしまったようで、今何処でどんな暮らしをされているのか全くわかりません。
遺された高齢の実母の介護費用等の立替にも限界があるので、できるだけ早く父の遺産分割協議を済ませたいのです。でも腹違いの姉を見つけられなければ遺産分割協議はできないんですよね?」

こちらのご質問に、簡単にではありますが回答してみたいとおもいます。

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確かに、今回のケースだと、法定相続人は『配偶者と子』ですので、行方を知らない母違いのお姉様(異母姉)も、相談者と同順位の法定相続人ということになります。
そして、遺産分割協議は法定相続人全員一致で成立させないと効力が生じません。

ですから、異母姉も相続人であるのはまちがいないので、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。

とはいえ、可能な範囲で居所調査をしても行方不明な場合の救済措置がなければ、現在のような多様化・核家族化の社会では、遺産分割協議ができないケースが沢山生まれかねません。

そこで、このような困った状況の場合には、不在者の従来の住所地にある家庭裁判所に、「不在者財産管理人」の選任を申し立て、選任された「不在者財産管理人」が行方知れずになった相続人のかわりに遺産分割協議に参加して、協議を成立させることができるようにはなっています。民法 第25条~29条参照)

もっとも、今回の相談事例のような場合でいうと、相続人の確定調査として行う必要があるお父様(亡くなった方)の一生分の戸籍収集からはじめて、各相続人の現在戸籍に辿り着く事ができますし、それらの戸籍と住所地をリンクさせる「戸籍の附票」というものを入手すれば、異母姉の住所を知る事が出来る場合もあります。

住所がわかれば、手紙などで状況連絡をして遺産分割協議に参加してもらえるようお願いすることが可能ですので、ここらあたりまでは最低限やってみて、やはり連絡がつかない。となった段階で「不在者財産管理人」の制度を使うことを検討されることをおすすめします。

というのも、「不在者財産管理人」の役目は、不在者に権利のある財産を守ることになりますから、遺産分割協議でも不在者の法定権利分を守る主張をするので、そんな主張をされては困る。といったご事情があるご家庭の場合は、自分達で不在者を見つける努力をされることをお薦めします。

そしてもちろん、このようなケースの場合は、素人さんがへたにやると、時間と費用の無駄遣いになることも多いので、早めに専門家に相談してすすめるようにしてくださいね。

今回のご質問者のケースとは異なる可能性が高いですが、相続人のひとりである異母姉の生死そのものが不明な場合は、「失踪宣告」の手続きを取るほうが良い場合もあります。また、失踪宣告にはいくつかのケース想定の要件があるのですが、この要件を満たし宣告を受けると、その人は宣告の時点で死亡したものとみなされます。よって、相続の時期によっては、法定相続人が誰かが変わってくる場合もあるので慎重に検討する必要があるので、このような場合も早めに専門家に具体的な相談をすることをお薦めします。

今回の御質問者の方のように、離婚歴があって全配偶者との間にお子さんがいるような方は、現家族のために是非、『遺言書(できれば法律の専門家を遺言執行者指定入り)』を作っておいてあげてほしいな。と改めて実感した今回のご質問でした。

 では今回はここまでとさせていただきます。

まだまだコロナ禍・黄砂など体調管理に苦労する日常ですが、皆様くれぐれもご自愛のうえお過ごしくださいませ。

 

筆者「るみchan先生」こと岩井留美 

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