「本気で大掃除したいなら、アルバムは開くな!」

子供の頃、「大掃除」という一家総出の行事があった。
3年に1回ぐらいのペースだった記憶だ。
ニシグチと同世代(50代後半)か、
上の世代の方ならわかっていただけると思う。



だいたい、季節は夏だ。



家中の畳をおもてに立てかけて日干しをしたりします。
よく乾くように間にかまぼこ板のような物を挟みます。
よく乾いたら、籐で作った布団たたきでパンパンして
元に戻します。
この時、畳と床板の間には、
新聞を敷き防虫の白い粉をまきます。



この一連の作業の始まりに、
いわゆる畳を上げた直後に
毎回、事件がおきます。


オヤジがおばあちゃん(オヤジのおふくろ)に
叱られているのである。



畳を上げる時、
3年前の新聞がオヤジの目に飛び込んできたら、
もう危険な状態になっているのである。



3年前の政治、経済、三面記事が
我が家の3年前の出来事とセットで
タイムスリップしてしまうのである。


当然のように、オヤジの手が止まるのだ。



「トシオ!畳上げるだけで日が暮れるがな!
 お前は、こどもの頃からいつもそうや!」



まあ、この時のオヤジは威厳のかけらもありませんでした。



時代は移って、
先日ニシグチも大掃除を敢行しました。
たたみこそ上げたりはしませんでしたが、
結構、意気込んで朝早くからスタートしました。



ダメです。
血は争えません。



絶対に、やっちゃならんことをしてしまったのです。



そうです。
掃除を初めて5分ぐらい経った時、
事件が起こりました。



アルバムを開けてしまったのです。



もういけません。
メタボでないニシグチが、そこでは青春しているんです。



今は、かわいげのかけらもない息子達も
アルバムのなかでは、光り輝いて俺に微笑んできます。



ふと気が付くと、始めたばかりの本棚の整理が全然進まないまま、
2時間経っていました。



そう言えばニシグチ、こんなこともしばしばです。



飲み物をとりにダイニングに行った時、
テレビが目に入ります。
助さん、格さんと弥七が大太刀まわり。



やっぱりダメです。
あたりまえのように
「この紋所が目に入らぬか!」までつかまってしまうのだ。



どうにか直さなければと思っていた、
オヤジから受け継いだこの性格ですが
最近、
「ん?悪くもないかな」と思えてきた。



3年前の新聞、昔のアルバム、水戸黄門ワンパターンラストシーン。
いずれも見ている時、おやじの顔も俺の顔もにんまりしています。
心地よい時が流れているんです。



一見、生産性の全く無い時間ですが
「至福の時」って、ひょっとしてこんな所にあるのかも、、、、。